面倒なワックスを一生かけなくていい!?
第3の選択肢、
フロアコーティングとは?

木でできたフローリングの扱いは、思っていたよりもずっと複雑でデリケートです。実は、自分でワックスをかけるのでも専門業者に頼むのでもない、第3の選択肢があります。それが「フロアコーティング」です。かつては新築の施工時にオプションとしてコーティングするというイメージがありましたが、最近では、メンテナンスのしやすさ、耐久年数の長さ、ランニングコストなどあらゆる面で魅力的であるため、新築の家でない方でも検討する人が増えているそうです。そこで、ここではフロアコーティングのいろはを詳しくご紹介していきたいと思います。

そもそもフロアコーティングって何?

フロアコーティングとは、一言で言えば、床の美しさや清潔さを保つために、さまざまな溶剤を用いて被膜で覆い、床をしっかりと保護するコーティングの総称です。主なメリットは、フローリングの表面をあらゆる汚れや摩耗ストレスから長期間保護できることです。

同じ家に長く住んでいるとどうしても床は傷んできます。フローリングは表面が傷ついたり壊れたりすると、補修をしなくてはいけません。ところが、コーティングをしていると、そういった傷みから床そのものを守ることができます。また仮にコーティングの表面が傷ついたとしても補修が簡単なので、フローリングの補修よりも費用はかなり安くすみます。

こちらの動画をご覧ください。これはフロアコーティング(UVコーティング)をかけた床面とそうでない部分をコインでこすり、その傷や汚れの付きにくさを示したものです。その違いは、一目瞭然ですね。

『リフォーム白書』によると、フローリングの貼り替え寿命は17年と言われていますが、フロアコーティングをすることで、フローリングの寿命自体を大幅に延ばすことができます。床の張り替えにかかる費用は、家具を移動する費用も換算するとかなりのもの。LDK30平米で考えた場合、一番値が張ると言われるUVコーティングでも約15万円。床の張り替えとなれば軽くその3倍はかかるため、17年後の貼り替えまでを視野に入れれば、初期費用はかかっても大きなコストダウンになるでしょう。

日常的なメリットも見逃せません。フロアコーティングは床ワックスとは違い、床の表面をしっかりと覆うため、水拭きや洗剤の使用など、これまでは床を痛める恐れがあるとして躊躇していた掃除法でも気にせずできるようになります。また、長い目で見れば、床ワックスをかけ続けていく場合よりも手間や費用の大幅な節約になります。

フロアコーティングの種類と性質

フロアコーティングには大きくわけて4種類あります。

主なものは、「ガラスコーティング」「ウレタンコーティング(水性、油性など種類がある)」「シリコンコーティング」「UVコーティング」です。

商品ごとにさまざまな名称がつけられていて、判別がわかりにくい場合もありますが、いずれも例外なく4種類のどれかに該当します。現在、フロアコーティングを取扱う業者、施工件数ともに多いのはガラスコーティングです。性能・価格ともに最もハイグレードなものはUVコーティングと言われています。

フロアコーティングと検索すると、「ペット用フロアコーティング」というような名称がひっかかることがありますが、これもペットのために“滑りにくさに特化したフロアコーティング”のことです。こちらも上記4種類のいずれかに分類できます。

それでは一つずつ、その特徴を見ていきましょう。

◆ガラスコーティング
実際にはガラスとは違いますが、被膜を形成する成分にケイ素が含まれることからこの名前がついています。現在、施工の簡単さからフロアコーティングを行う業者で一番多いのが、このガラスコーティングです。

<特徴>
ガラスコーティングの特徴は、硬度に優れ、摩擦や傷に強いにもかかわらず、被膜が薄いことです。また、光沢のあり・なしを選ぶことができるので、床の持つ素材の風合いを活かすことができます。弱点は、アルカリ性の薬品に対して耐性が弱いこと、完全硬化までに時間がかかること、滑りやすいこと、補修が難しいことがあげられます。また、歴史が浅いため、耐用年数の信頼性はまだそれほど高くはないようです。

<価格>
4種のコーティングのうち、業者ごとの価格の上下差がもっとも激しく、一言では言い切れないのが実情です。塗料の値段は高めですが流通量は多く、施工も簡単であるため、業者の力量で高くも安くもできるというのが相場が捉えにくい要因です。

<耐用年数>20年以上

◆ウレタンコーティング
ウレタンコーティングのなかでも水性・油性と種類がありますが、施工されることが多いのが「水性ウレタンコーティング」と呼ばれる水性タイプのもの。かつては大手のフランチャイズ店などでも採用されていましたが、現在ではガラスフロアコーティングなどに比べると、取り扱う業者も少なくなっています。

<特徴>
被膜が薄く、光沢があまりないため、落ち着いた風合いになるのが特徴です。施工も安価で、補修も比較的簡単です。薄さと硬化・安定の早さ、そして密着性の良さなどから、フロアコーティングとしてだけでなく、下地材として使われることも。水溶性なので施工中の臭いが少ないことも強みと言えるでしょう。弱点は、仕上がる被膜の強度や耐久性、耐用年数が他のコーティングよりも低いことです。

<価格>
他種と比べると比較的安価

<耐用年数>3~10年

◆シリコンコーティング
正確には、アクリル・シリコン樹脂塗料をつかったコーティングです。これは、アクリル樹脂をシリコン樹脂に変性させて製造します。被膜が厚いため、グリップ性に富み、歩きやすさの面で優れています。鏡のような光沢が出るのも特徴のひとつで、光沢感のある床が好まれていた時代には、全国的に扱う業者の多いコーティングでした。現在は嗜好の変化もあり、ガラスコーティングなどに比べて、それほど多くの施工は行われていません。

<特徴>
柔軟性があり、床材への密着度が高いという特徴があります。撥水性が高く、薬品にも強いので、表面に付いた汚れを簡単に落とすことができます。滑りにくいのでペットを飼われていたり、高齢の方がいらっしゃる家庭などでも重宝されます。弱点としては補修が難しいこと、年数が経過すると黄色に変色しやすいことがあげられます。

<価格>
もっとも安価

<耐用年数>10~20年

◆UVコーティング
紫外線照射機という特殊な機材を使って硬化させるコーティングです。UV硬化による硬化率の高さによって、他のコーティングよりも高い耐久性があります。機材が高額で入手も困難なことから、大規模に施工を手掛ける業者は限られています。UVコーティングといえばこれまでは“濡れたような深い光沢”が特徴でしたが、最近では質感を変えない艶消しタイプも開発されています。そのため艶を出したい人だけでなく、無垢材などナチュラルな床の質感を大事にしたい人からも注目されています。

<特徴>
特殊な機材を使った硬化法を採ることで、他の3種よりも硬化が圧倒的に早いのが特徴です。そのため、施工後すぐに日常生活に戻ることができます。被膜が非常に強いため、床面を長期間保護する点でも、美しさの点でも優れています。熱や摩耗、薬品類に強いのも強みです。ガラスコーティングなどは塩素系洗剤を垂らすと変質しますが、UVコーティングは一切反応しません。弱点は、専用の機材や技術を要することから取り扱う業者が少ないこと、価格面においてもハイグレードだということです。

<価格>
おしなべて高い傾向

<耐用年数>20年以上

4種の違いをざっくり見分ける方法は、塗料を固める硬化方法

4種類とはいえ、それぞれの特徴に違いがあり、メリット・デメリットも価格も違うため、どれを選べばいいのか迷ってしまいますね。そこで、フロアコーティング業界に詳しい、専門家の方にお話を伺ってみました。

「フロアコーティングの分類は4種ありますが、本当の意味では2つなんです。一番大きな違いは、塗料を硬化させる工程の違いです。

『ガラスコーティング』『ウレタンコーティング』『シリコンコーティング』の3つは、塗料の違いはあれど、“塗って自然乾燥させる”という点では同じ工程を踏みます。『UVコーティング』は硬化させる工程そのものがまったく違うんです。このコーティングは紫外線照射機を使って人工的に焼き付けていきます。

これは歯の治療で、詰め物や接着剤に光を当てて硬化させるのと似ていますね。また、女性であれば、ジェルネイルの仕組みと同じなのでイメージしやすいかと思います。当然、自然乾燥するタイプとはまったく違うものなので、そこで線引きをしていただくと違いがわかりやすいでしょう」

なるほど。4種類の違いがなんとなく見えてきました。それでは、自然乾燥で仕上げる3つのコーティングと、焼きつけて仕上げるUVコーティングのうち、どうやって自分に合うコーティングを選べばいいのでしょう?

「たしかにガラス、ウレタン、シリコンの3つの中だけでも迷ってしまわれる方が多いかもしれませんね。これは個人的な見解ですが、実際はガラスコーティングとUVコーティングの二択が、現実的な選択肢なのではないかと思います。実際に、現在国内で施工されているフロアコーティングの8割以上が、この2種類のどちらかです。

一番耐久性高く、性能的に信頼のおけるものはUVコーティングです。ですから、確実にフローリングを傷から守りたい人はこちらを選ぶといいでしょう。耐久性は劣るものの、比較的安く、フローリング本来の質感を残せるのがガラスコーティングです。費用を抑えたいか、床質にこだわる方はこちらです。

とはいえ、最近ではUVコーティングの中でも艶が出ず、施工の前後で質感に変化のないまったく新しいコーティングが開発されたというニュースも入ってきています。しっかり強く守ってナチュラルに仕上げる、という新しい選択肢が増えました」

まとめ

「フロアコーティング」という言葉自体を初めて聞いた方も多いのではないでしょうか。フロアコーティングは20年以上前からあるものだそうですが、ここ最近は、ペットを家の中で買う人、家事の時短をしたい人、「こだわりの床でくつろぎたい」という人が増えたため、あらためて注目が集まっているそうです。

どのコーティングにするかは、好みや考え方次第ですが、気を使いながらの掃除や複雑なワックスがけから解放されるだけでも、心にゆとりが生まれそうですね。