知っているようでほとんどの人が知らない!?
「我が家のフローリングは
何で出来ているの?」

一見、同じように見えるフローリングも、実はさまざまな種類があり、それぞれに異なった構造や性質を持っています。そして、床の材質によって適切なお手入れ方法がまったく違います。言うなれば、自宅のフローリングの種類と特徴を知ることが美しい床を保つためにはかかせないのです。反対にケアを間違えると、フローリングが痛み、高いお金を出して補修や貼り替えをしなくてはなりません。大切な家の床だからこそ、ぜひその特徴を知って長持ちさせたいものですね。

軽く300種を超える、フローリングの種類


写真A:右上が無垢材。右下が複合フローリング。左が複合タイプのシートフローリング

ひと口にフローリングと言っても、現在、流通しているものだけでもその種類は軽く300種を超えるといいます。また、常に新しいタイプのフローリングが開発され、順次更新されています。さらには、ハウスメーカーが建売住宅や分譲マンションのシリーズごとに、オリジナルのフローリングをつくることも。

また、たとえ品番が同じであっても、製造工場やロットの違いで性質は絶妙に変わってくるそうです。そう考えると、今の日本には膨大な種類のフローリングがあるということになります。専門家であればともかく、これを一般の人たちが知ることはなかなか難しいでしょう。ただし、千差万別のフローリングでも、大きく3つ(※)に分類することはできます。

それは、「複合(合板)フローリング」と「無垢材(単層)フローリング」、そして数年前から出始めた「シートフローリング」です。

※フローリングの分け方については、「複合(合板)フローリング」と「無垢材(単層)フローリング」の2種類に分類しているサイトが多くありますが、ここでは、複合フローリングの一種ではあるものの、表面の素材が違うシートフローリングを加え、3種類に分類しています。

その① 複合フローリング(または合板もしは複層フローリング)


写真B

まずは一番使われることが多いタイプから紹介していきましょう。それは、複合フローリング(合板フローリング)と呼ばれるタイプの床材です。これは、その名の通り、合板の上にいろいろな木の素材を貼り合わせてつくられています。これを複合材と言います。一般家庭にはかなり普及していて、フローリングと言ったときに一番イメージしやすい床材です。実際に、ハウスメーカーなどでも、「普通のフローリング」と言うと、これを差すことが多いようです。

写真Aの右下の床材が複合フローリングです。上から見ると1枚の木でできているように見えますが、写真Bのように横から見ると、断面は基材(合板、集成材など)の上に、厚さ1ミリにも満たない、化粧材(ここだけが本物の木材)が貼り合わされていることがわかります。一説には、昭和40年頃から世に出回るようになり、昭和60年頃から床材の主流になったそうです。

種類が多い分、質もまちまちで、新しいものでは高品質なものが出回る一方、古いタイプの一部には薬品類にきわめて弱く、弱性の洗剤にすら耐えられないものも存在するそうです。

最近では、複合フローリングの中でも、「厚単板(あつたんぱん)」と呼ばれる、表面に貼る天然木が2〜3mmと、少し厚めの板を張り付けたタイプも出ています。値段は一般的な複合フローリングよりも張りますが、立体感や奥行きがあり、部屋全体のグレードが上がるような仕上がりです。また、次に紹介する無垢材のようなナチュラルで味のある質感を出せるタイプもあり、ハイグレードなマンションや家づくりにこだわりがある方のお宅で使われることが多いようです。

複合フローリングの特徴とお手入れ方法

複合フローリングはもっとも種類が多く、最近は衝撃や摩耗に強い商品なども開発され、年々、機能が改善されています。比較的掃除もしやすく、固く絞った雑巾であれば水拭きも中性洗剤の使用も問題ありません。薄めて使えば重曹やセスキ炭酸ソーダを使った掃除をしても問題ないという声も多いので、念のため目立たない箇所でテストする必要はありますが、オールマイティーに掃除ができると言えるでしょう。

ただし、複合フローリングは一度傷がつくと、無垢材のように簡単に補修することができません。大きなシミや傷がついたら、部分的な貼り替えをしなくてはいけないケースも。また、質感が硬いため、歩き心地が良くないと感じる人もいるようです。

その② 無垢材フローリング(または単層フローリング)

いわゆる無垢床と言われるタイプです。無垢材とは木を切り出して、そのままのかたちで製材・加工した材木のこと。そこから、“何も手を加えていない、天然木のままのフローリング”だと思いがちですが、実際の無垢フローリングは多くが塗装を施されていて、無塗装のものはほんの一部です。

塗装されている場合は、植物由来の塗装剤を使っている自然塗装と、科学的な塗装剤を使っているウレタン塗装があります。どちらも価格は高めで一般的な複合フローリングの倍以上はかかります。保育園や幼稚園、お寺などで使われることが多く、無垢材を使っている一般家庭の割合は全体の5~8%程度だと言われています。

無垢材フローリングの特徴とお手入れ方法

無垢材フローリングの魅力は、木の持つ自然のままの美しい質感と肌触りです。また、年月を経るごとに変化していく様子が見られるのも醍醐味です。もし傷ができても、その部分を削って補修しやすいというメリットもあります。柔らかく、足への負担が少ないのも魅力のひとつでしょう。

お手入れには注意が必要です。まず、自然塗装の場合、耐水性が弱く、汚れも染みやすくなります。そのため、水をたっぷり含んだモップや雑巾での掃除はできません。
ウレタン塗装の方は、表面に強い塗膜を貼る塗料を塗っているため耐水性に優れています。落ちにくい汚れの場合は、複合フローリングと同じように中性洗剤をつかった雑巾がけが可能です。

いずれの塗装にしても、専用ワックスでのメンテナンスを定期的に行う必要があり、水をこぼして放っておくとすぐにシミになるなど、扱いが難しいのは共通しています。また、吸湿性に優れているため、収縮や反りを起こしやすいというデメリットも。とはいえ多少の汚れや反り、隙間などを“味”ととらえられれば問題ないでしょう。

その③ シートフローリング

シートフローリングは、10年近く前から市場に出回り始めた、比較的新しいタイプのフローリングです。構造上は複合フローリングとまったく同じですが、一番の特徴は何と言っても表面が木ではないということ。シートフローリングはその名の通り、木目を印刷した“シート”を基材の上に貼りつけています。このタイプのフローリングは一時期、マンションを中心に急速に普及しましたが、現在では終息し、主流は古くからある複合フローリングに戻っているそうです。

シートフローリングの特徴とお手入れ方法


カッターなど鋭利なもので傷が付き、表面がはがれてしまったシートフローリングの床面

シートフローリングは印刷されたシートを使っているため、従来の複合フローリングに比べて個体差がなく均一です。また、表面が木ではないことから汚れにも強く、傷や薬品などに対する耐性も優れています。そのため、一般的な掃除方法であればどういった方法で行っても問題がなく、3つの分類の中では一番メンテナンスしやすい床材と言えるでしょう。
一方で、表面のシート自体が非常に薄いので、鋭利なもので傷をつけたり、重い家具を引きずって破れたりすると補修するのが難しいという弱点があります。

まとめ

ご自宅のフローリングがどんな種類のものか、わかりましたか? 
簡単に分類するポイントは素材です。

たとえば…
すべて木でてきているのが「無垢フローリング」
表面が木でできているのが「複合フローリング」
そして、表面も基材も木ではないのが「シートフローリング」です。

無垢フローリングについては普通の人でも見た瞬間にすぐにわかるでしょう。ただし、最近出てきている「厚単板」と呼ばれる付き板が厚いタイプは判断が難しいようです。それは床材の品質自体もかなり高く、表面が無垢風で艶なしタイプなども出てきているため、一般の人が表面を見ただけではわからないからです。

本文では触れませんでしたが、最近はかなり本格的な木目調のクッションフロア(塩化ビニール素材)なども登場していて、「自分ではずっとフローリングだと思い込んでいた」という方もいらっしゃいます。これは大袈裟な例かもしれませんが、それくらい現在は技術革新が進み、床材のレベルが全体的に上がってきているということです。

ちなみに、プロは部屋に入った瞬間、感覚的にわかるそうです。大きな特徴としては、木を表面に貼ってある複合フローリングにはやや丸みがあり、シートフローリングは固く、四角い角が立っている印象を持つとか。また、見分けがつきにくい厚単板でも、顕微鏡のような特殊なルーペを使うことで正確に判断できるそうです。

調べてみると、フローリングはかなり奥深い世界ですね。また、床材がはっきりわかっていても、施工の仕方や住環境によっても床の状態は刻々と変わります。ですからお掃除をする場合も「この床なら大丈夫だろう」と過信せず、様子を見ながら慎重に行ってください。